2013年にユネスコの無形文化遺産に登録され、世界から注目を集める「和食」。私たち日本人の伝統的な食文化である和食の原点ともいえるのが「だし」です。だしは和食の基本であり、うま味を考えるうえで欠かせない存在です。古来から日本人の食生活を彩り、素材のおいしさを引き立ててくれています。そして、和食のだし文化の根幹をなすのが「かつお節」です。昆布とともにだしに用いられる基本食材であり、うま味が凝縮されたかつお節を煮出して作るだしが、繊細で奥深い和食の味わいを生み出します。
日本で生まれたかつお節は独自の製法と加工技術で作られる世界に誇る食材です。そして、和食が世界に広まるにつれてうま味やだしの認知も広がり、かつお節もまた海を渡って各国の食文化に取り入れられ始めています。日本発のかつお節が海外の食文化と融合し、新しい味を人々に届けているのです。
海外でかつお節を
製造・販売する企業の
取り組み
和食シェフからの
メッセージ
私が海外で和食を紹介させていただく中で感じたことは、日本の伝統的な食材や手法にこだわりすぎず、その土地ならではの水や食材の特徴を生かして和食の文化を届けていく必要があるということです。
今回、海外で製造・加工されているかつお節を食べ比べさせていただき、かつお節にも「テロワール」が如実に出ているということがわかり大変興味深かったです。それぞれのかつお節で、香り、うま味、塩味、酸味のバランスが異なりますし、違った良さがありますね。
海外で製造されているかつお節は、やはりその土地の食材とあわせて活用してみたいです。例えば、スペイン産のかつお節は昆布ではなくグルタミン酸を多く含む現地の生ハムと一緒に一番だしをとってみたいとか、フランス産のかつお節はフランスのハーブや油脂とあわせてみたいなど、その土地の食文化とあわせることで新しいかつお節の魅力を表現してみたいと思いました。
かつお節を、それぞれの国のグルタミン酸を含むうま味食材と一緒に使うことで、低カロリーで深いうま味をもつヘルシーなスープ(だし)が取れますので、各国の日本料理人だけではなく様々なジャンルの料理人にとって、かつお節によって料理の幅が広がる可能性があるのではないでしょうか。
また、日本国内でフランス料理やスペイン料理を作っている日本人料理人は、和食のニュアンスが強くなりすぎるため、かつお節を敬遠する方が多いとお聞きしていますが、今後各国のかつお節を逆輸入して活用することで新しい発想の各国料理が日本で生まれたら面白いなと思います。
かつお節が世界中で愛されているトマトや乾燥きのこのように、各地でうま味食材として活用されていったら誇らしいですね!