マイケル・アンソニー氏
Gramercy Tavern シェフ
(アメリカ)
うま味によって誰もが食べたくなる料理にもなるが、一方で前面に出すぎることもない。うま味を料理に活かすことで、少ない食材でもひきつけるような料理へのチャンスが大きく広がった。それは食材の自然なおいしさを引き出すからだ。
ギャリー・ビーチャム氏
モネル化学感覚研究所名誉顧問
(アメリカ)
うま味は母乳に多く含まれている。母乳にグルタミン酸が多いことは、人種による差はない。わたしたちは赤ちゃんのときからうま味にふれ、その味覚の刷りこみが行われている。意識していなかったとしても、誰もが生まれたときからふれている味だ。
アレクサンドル・
ブルダ氏
SaQuaNa オーナーシェフ
(フランス)
うま味の感覚を定義するなら、「口にする喜びがある味」。だからわたしは、食べる喜びをもっと感じてもらうためにうま味を使っています。うま味を取り入れながら、決まりやスタイルにとらわれない創造的な料理をつくっていきたいですね。
マウロ・コラグレコ氏
Mirazur オーナーシェフ
(フランス)
うま味は日本から世界に伝えるといった、日本だけのものではない。西洋ではうま味への特別な意識はなかったが、最近ではだいぶ認知され、料理にも十分に活用されている。
レジス・カーサン氏
Nobu London パティスリーシェフ
(イギリス)
タマリロを初めて食べたとき、これまでと違う味を感じた。後からそれがうま味だとわかったが、たぶんタマリロのうま味を発見したのはわたしが初めてだろう。その発見によって、新しいデザートのアイデアが生まれた。
伏木 享氏
龍谷大学農学部教授
うま味には「うま味」と「旨味」(おいしい味)があるが、いまや「うま味」は世界の共通語になっている。うま味は世界の人々においしさを与えるだけでなく、子供たちがうま味を知り、体験することで食の未来を育て、世界を健康にする可能性をもっている。
デヴィッド・キンチ氏
Manresa
オーナーシェフ(アメリカ)
うま味は味のバランスや相乗効果を考えるうえで、わたしのすべての料理にとって大切な要素です。レストランで出す料理もなるべく脂肪分を減らすよう心がけていますが、ヘルシーなだけでなく、おいしさや満足感を与えてくれるのがうま味なのです。
栗原堅三氏
北海道大学名誉教授
うま味は、世界中の食材に普遍的に含まれている。他の味の角を取り、まろやかで優しい味にするための調整役を果たしている。うま味がとくに豊富な食材を使えば、うま味がさらに積極的に料理に参加することになり、まろやかで優しい味の料理が作り出される。
ハロルド・マギー氏
フードジャーナリスト
(アメリカ)
調理することによって素材のもつうま味を引き出すことはできるが、調理のプロセスでうま味が増えることはない。大事なのは、うま味を含んでいる素材を使うこと。もうひとつは、うま味のある素材の組み合わせで相乗効果を引き出すことだ。
ヴィルヒリオ・
マルティネス氏
Central オーナーシェフ
(ペルー)
うま味に出会ったことで料理への考え方が変わった。新しい味や調理法へのチャレンジでもあり、未知の食材への冒険でもある。新鮮なシーフードにローカルな食材を合わせた料理に魅力を感じるが、そうすることでいっそううま味が引き立つように思う。
松久信幸氏
Nobu オーナーシェフ
うま味を料理に使うときに意識しているのは、ほかの4味とのバランス。酸味や甘味など、ほかの基本味と組み合わせてバランスをとり、味に立体的なふくらみを出すようにしている。ローカルな食材や味を取り入れながら、うま味を世界に発信していきたい。
ジュリー・メネラ氏
モネル化学感覚センター研究員
うま味物質グルタミン酸はアミノ酸の一種で、母乳を初めとする多くの食品に含まれている。これまでの研究から、新生児が生来うま味への嗜好があること、母乳で育ち、伝統的なうま味食材を食べることでさらにうま味への嗜好性が高まることが明らかになっている。
ガブリエラ・モリーニ氏
イタリア食科学大学准教授
火を使って料理をしたり、食べ物を保存することができるようになったヒトが、人類史上追い求めてきた味がグルタミン酸のうま味であり、Umami is the most human taste である。
オーレ・
モーリットセン氏
サウスデンマーク大学教授
ノルディック・フードラボ
(デンマーク)
とくに意識しなくても、北欧では伝統的にうま味を料理に活かしてきた。近年ではうま味はよく知られるようになり、おいしさを引き出すためにチーズや発酵食品などが活用されている。北欧の海藻を使ってだしをとる試みもされている。
村田吉弘氏
菊乃井 主人
海外の有名シェフのあいだで、急速にうま味への関心が高まっている。うま味は日本が誇りとする文化。自信をもって、世界に普及すべきものであり、うま味はこれから世界に爆発的に広がっていくだろう。
長江桂子氏
パティスリーシェフ
個性の強い食材を使っても、主張しすぎずバランスをとるようにしている。食べると味が変化していき、最後にうま味が残るのを感じるぐらいがいい。五味をすべて使ったデザートは、砂糖は少なくてもうま味がカバーし、満足感が得られる。
ジョン・プレスコット氏
フード・コンサルタント
(オーストラリア)
人種が違っても、さまざまな形でみながうま味に親しんでいる。英語ではsavory(風味がよい)、mouthfulness(口のなかに広がるような)、mouthwatering(口が潤うような)という言葉がもっともうま味をうまく表現している。食品の風味に効果を発揮するもので、タンパク質の代謝にとっても大事な役割をしている。
笹島保弘氏
イル・ギオットーネ
オーナーシェフ
イタリア料理にだしの概念はないが、トマト、チーズ、生ハム、ポルチーニなどのうま味食材がふんだんに使われている。京野菜を使ったイタリアンの精進料理に挑戦したことがきっかけで、うま味や昆布だしの威力を見直すことができ、料理観も大きく変わった。
ローラ・サンティーニ氏
料理研究家
Umami が日本語に由来するからと言って、この味覚が日本あるいは極東独自のものとするのは大きな間違いだ。うま味を感じることは愛情を感じるのと同じように、人類共通の感覚であり、単一文化に属するものではない。舌を持つ人なら誰もが共有し楽しむことができるものである。
ペドロ・ミゲル・
スキアフィーノ氏
Malabar オーナーシェフ
(ペルー)
うま味は深い味と調和を生みだす。うま味食材を組み合わせることで、料理がおいしくヘルシーにもなり、おいしさとバランスの両方を可能にするテクニックだ。ペルーにはうま味食材がたくさんあり、それを料理に活かすことが何よりの楽しみだ。
下村浩司氏
エディション・コウジ シモムラ
オーナーシェフ
うま味を活かせば、軽やかなおいしさを表現することができる。また、機内食など味覚への影響が懸念される環境下での料理においても、うま味を活かすことでおいしさが保てることを実感している。うま味を理解し活用する技術は、今後ますます料理人に求められていくことだろう。
髙橋義弘氏
瓢亭 15代主人
素材の風味が強いほど、だしもそれに見合ったうま味がないとバランスが悪い。逆にバランスが良いと素材の味がグッと出る。それが素材を活かすということ。うま味のある料理は口中にほどよく余韻が残り、心に残る。ほっとする、ほっこりすると表現されるような、印象深い料理になる。
田村 隆氏
つきぢ田村 三代目
我々日本人には本能的にうま味を感知する細胞が備わっていると思う。幼い頃から、だしのきいた食事に慣れ親しむうちに、自然と、微妙で繊細なうま味をきちんと感じるようになる。うま味は、まさに、日本人の ”DNA の一部” と言えるだろう。
徳岡邦夫氏
京都吉兆嵐山本店
総料理長
うま味はどんな食材と組み合わせるのか、どうやって食べるのかがいちばん大切。うま味を知ることで新たな食材の組み合わせにチャレンジすることができる。複数の食材が絡まりあったときにこそ、奥行きのある味、深い味が生まれる。
脇屋友詞氏
Wakiya 一笑美茶樓
オーナーシェフ
中国料理のだし(湯=タン)は、和食に比べさまざまな種類がある。それらをうまく使い分け、配合し、バランスがよく完成度の高いだしを仕上げる。それを使えば、春雨のような味のない具材でもうま味をたっぷり含んだ極上の一品に生まれ変わる。これが中華の煮込み料理の秘訣だ。
山口 浩氏
神戸北野ホテル
総支配人・総料理長
フランス料理では食材から調味料を作る。さまざまな食材の味が、点から線、そして面へと広がっていくとき、うま味がそれらの食材の味覚を引き出し調和する。驚きと感動を与えるオンリーワンのフレンチにとってうま味の役割は大きい