麹。大豆を発酵させ
るみそ作りに
欠かせない働き者
みその主原料のひとつ「麹」。麹は、日本の食文化を語る上で無くてはならないものです。食は健康と密接に関係していますので、長寿の国日本を支えてきた重要な存在といっても過言ではありません。湿度が高い日本の気候は麹菌が繁殖するのに適しているといわれ、みそをはじめ、醤油、日本酒、甘酒、みりん、酢などの伝統的な発酵食品が麹から生まれています。長年に渡る日本の食文化への貢献と、今後、さらに広い分野で活用されることが期待され、2006年10月、麹菌=コウジカビ(学名:Aspergillus oryzae アスペルギルス・オリゼー)は日本醸造学会によって〝国菌〟に認定されました。
麴菌は米麹や豆麹を作るために使われている糸状菌の総称でカビの一種です。様々なタイプの麹菌が味噌、醤油、日本酒、焼酎を作るために使用されています。たんぱく質をアミノ酸に分解するプロテアーゼ、でんぷんを糖に分解するアミラーゼ、脂質を分解するリパーゼなど、多くの酵素が発酵工程でうま味物質や甘味物質や香り物質の生成に関わっています。
今から約600年ほど前の室町時代に、麹菌に炭を混ぜることで、種類の違う麹菌を別々に生育させる技術が日本で生まれました。このことによって、麹を作る商売が成立し、みそ、醤油、日本酒等を作る人たちは、特定の麹菌を入手することで、品質が安定した発酵食品づくりが可能になったのです。
各種の麹を作って売る店は「もやし屋」と呼ばれています。世界でも類を見ない、そして世界初のバイオビジネスとも言われています。
麴菌はでんぷんを分解するアミラーゼやタンパク質を分解するプロテアーゼという酵素の働きで、でんぷんは糖に、タンパク質はアミノ酸に分解されていきます。そして、麹菌のプロテアーゼの働きによって大豆のたんぱく質は各種アミノ酸に分解され、うま味成分であるグルタミン酸が発酵期間中に増えていきます。
どの麹を使用するかによって、出来上がったみその味が変わります。
その特徴は下記のようになります。
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米麹
塩味と酸味
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麦麹
さっぱりとした甘味
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豆麹
コクと深みのある味
下図は発酵期間中の各種アミノ酸の増加の様子を示しています。グルタミン酸とアスパラギン酸はうま味のあるアミノ酸です。発酵の始めの段階(約20日~35日)で、うま味のあるアミノ酸が増加していく様子がわかります。一方、アミノ酸の一種であるヒスチジンは熟成10日以降は、殆ど変化していません。