だし:おいしさは、
だしのうま味で決まる
バリエーション豊富で視覚的にも美しい和食ですが、目に見えないところにも、その魅力を支える要素があります。それは、「だし」と呼ばれる一見シンプルな要素です。だしは和食の基本ともいえるスープで、見えない形で多くの日本料理に使われています。
だしが他のスープと異なるのは、西洋のブイヨンのようにシンプルな材料を長時間煮込むのではなく、時間をかけて熟成させた材料を厳選して使い、水に浸すだけ、または、短時間火にかけるだけで、素材が持つ風味のエッセンスそのものを抽出するという点です。
だしには昆布とかつお節を組み合わせて使うのが、もっとも一般的です。だし作りに使われる材料には、他に椎茸や煮干しがあります。だし作りは長い年月を経て進化してきました。煮るという調理法は、日本では縄文時代(紀元前13000年~300年頃)から利用されていたことが分かっています。貝や魚の骨から取ったスープを、他の料理の味付けに使っていたようです。
7世紀頃には、昆布とかつお節を使っただしが登場しました。これがさらに改良され、日本になくてはならない調理用スープとなっていったのです。一般的に、一番だしと二番だしという二つの形で使われています。 だしは陰で支える役割でありながら、和食の中心的存在といえます。だし自体の味が特別なのではなく、他の材料の味を引き立て、調和させる力に優れているからです。和食の秘密は、味を引き立てつつ調和させるこの技術にあります。