食材別うま味情報 海産物

わかめ

<わかめ> わかめ、海苔といった海藻類は、日本では古くから食用として用いられている。わかめは太平洋岸では北海道の室蘭以南、日本海側では北海道以南のほとんどの海岸で分布しており、とくに三陸・鳴門・出雲わかめなどが有名。保存性からほとんどが乾燥や塩蔵などの処理をしている。昆布と同じ褐藻類であるが、だし用には使われず、味噌汁や酢の物の具材としてよく使われる。わかめのうま味成分のグルタミン酸は、葉の部分よりも茎やめかぶに多く含まれている。

  • グルタミン酸含有量(生・水戻し)(mg/100g):2~50

海苔(のり)

海苔(のり)は紅藻類に属する海藻のアマノリ属のアサクサノリやスサビノリを日本の沿岸で主に養殖をおこなっている。11月から4月にかけて収穫される。薄い膜状ののりを細かく刻み、すき、乾燥して板状に加工する。干したままの干し(乾)海苔、干し海苔を高温短時間焼いた焼海苔、同じく干し海苔を調味した味付け海苔が多く流通している。干し海苔には非常に多くのグルタミン酸が含まれ、また核酸系のイノシン酸、グアニル酸も含まれている。

  • グルタミン酸含有量(干し海苔)(mg/100g):170~1350
  • イノシン酸含有量(干し海苔)(mg/100g):1~40
  • グアニル酸含有量(干し海苔)(mg/100g):3~80

かつお節/まぐろ節

かつお節の製造方法は、生カツオを3枚に下ろしたものを亀節、大きいものはさらに縦に2つに分けたものを雌節(腹)雄節(背)の本節といい、煮熟(シャジュク・・・ゆでる)したのちに皮むき・骨抜きする(なまり節)。次にゆっくりと煙で燻しながら亀節で8日、本節で10日から15日かけて乾かす。この焙乾(バイカン)したものを荒節という。さらにカビ付けを行う。カビが生えてきたら落とし、またカビを付けることを4から6回繰り返し7,8週間かけて熟成させる。このカビ付けにより、節の中の脂肪分が減り、燻煙臭がマイルドになり香味が加わった本枯節ができる。かつお節は、削り機を用いて薄く削ってからだしに使う。関西ではカビ付け前の荒節でとったストレートでコクのあるだしも好まれる。本枯節の雄(背)節は脂肪分が少なく上品なだしが、雌(腹)節は、コクのあるだしがとれる。グルタミン酸の豊富な昆布とイノシン酸の豊富なかつお節との組み合わせによって作られる一番だしは、うま味の相乗効果をもっとも効果的に取り入れた調理法で、和食の基本となっている。料亭などでは、かつお節のかわりにまぐろ節を用いることもあり、上品ですっきりとした味わいのだしがとれる。

  • かつお節
  • グルタミン酸含有量(mg/100g):30〜40
  • イノシン酸含有量(mg/100g):470〜700
  • まぐろ節
  • グルタミン酸含有量(mg/100g):30
  • イノシン酸含有量(mg/100g):970

煮干し

煮干しは、その文字通り、煮て干した小魚を指す。最も一般的なのはカタクチイワシだが マイワシなどその他の小魚が使われることもある。日本料理のだしとして多く使われている。頭と腹わたは苦みや雑味が出るため、取り除いて使用する。なお、イノシン酸は、生の魚では時間の経過とともに減少してしまうが、煮干し製造の際には原料の生魚を一度煮ることでイノシン酸の分解酵素の働きを止め、イノシン酸が多く残る。また煮た魚を干すことで水分が減り、うま味成分も濃縮される。味噌にはグルタミン酸が含まれているため、イノシン酸が含まれる煮干しのだしを味噌汁に使うことで、うま味の相乗効果があらわれる。

  • グルタミン酸含有量(mg/100g):40〜50
  • イノシン酸含有量(mg/100g):350〜800

貝 類

貝殻を持つ軟体動物。ハマグリなどの二枚貝、サザエなどの巻貝などを主にいう。食用にされる貝には生食ができず加熱が必要なものもある。それぞれに栄養価が豊富でタウリン、カルシウムなどが含まれる。特にホタテ貝の貝柱はグリシンやアラニン等の甘味のあるアミノ酸が豊富に含まれ、グルタミン酸も多く、和洋中、多方面の料理に使用される。

  • ハマグリ
  • グルタミン酸含有量(mg/100g):210
  • ほたて
  • グルタミン酸含有量(mg/100g):140
  • あさり
  • グルタミン酸含有量(mg/100g):90
  • ムール貝
  • グルタミン酸含有量(mg/100g):110

くるまえび

えびは、甲殻類に分類され歩行類(いせえび・ロブスター)と遊泳類(くるまえび・ブラックタイガー)にまとめられ、種類が豊富で世界中で古くから食用とされてきた。食材として活用しやすく、和食をはじめ、中華、フランス料理などで多用される。えびには甘味のあるグリシン、プロリン、アラニン等のアミノ酸が多く含まれ、これとグルタミン酸とイノシン酸によりおいしさのもととなっている。甲殻類では一部例外もあるが核酸系のうま味成分はイノシン酸が含まれる。

  • グルタミン酸含有量(mg/100g):120
  • イノシン酸含有量(mg/100g):90

うに

とげのある殻の内部にある生殖腺(精巣・卵巣)を食す。食用には、えぞばふんうに、むらさきうに、あかうに、ばふんうに等で、特にばふんうにが美味とされている。うににはうま味成分のグルタミン酸が多く含まれている。なお、アミノ酸の一種のメチオニンも含まれており、このメチオニンがうにらしい特有の味に大きく寄与している。

  • グルタミン酸含有量(mg/100g):100

冷凍むきえび

捕獲後、皮むき、背ワタ除去等の下処理を行ったのちに急速冷凍したもの。ベトナム、インド、インドネシア等アジアからの輸入品が80%、品種としてはブラックタイガーが30%を占めている(2014年)。下処理がしてあるため簡便性が高く、和洋中の広い範囲で用いられる食材。(参考:生えびのうま味成分としてはグルタミン酸とイノシン酸も含まれる。)

  • グルタミン酸含有量(mg/100g):15〜30
  • (イノシン酸含有量 データなし)

するめいか

軟体動物中の頭足類に属する十腕目の一種。全身からスミまで捨てる部分がなく、塩辛やスルメ(乾製品)等、保存食としても加工でき重宝される。ユダヤ教ではタコと同様にうろこのない海生動物を食すことが禁じられているためイカを食用にする習慣はないが、地中海料理等ではイカはポピュラーな食材として使われる。甘味もあるが苦味のあるヒスチジンやヒポキサンチンが含まれるため生食より加熱調理に向いている。また、核酸系のうま味成分のイノシン酸は少量しか含まれていない。

  • グルタミン酸含有量(mg/100g):20~30
  • イノシン酸含有量(mg/100g):0.2

たこ

体にウロコ(鱗)や殻がなく、体表の色素細胞を使い、周囲の環境によって体色を変える。日本人には食用としてなじみが深いたこだが、鱗がない魚として外国ではデビルフィッシュの異名を持つ。食用にする地域もイタリア等ごく少数の国に限られている。グルタミン酸のほか核酸系のうま味成分のアデニル酸(うま味の強さはイノシン酸の1/8程度)を含む。トマトなどグルタミン酸の豊富な食材との調理では相乗効果が起こることが期待される。

  • グルタミン酸含有量(mg/100g):20~30
  • アデニル酸含有量(mg/100g):40~140

はまち(ぶり)

成長するにつれ呼び名の変わるアジ科の出世魚。日本沿岸で季節回遊をするが、冬場のぶりは“寒ぶり”と呼ばれ、脂がのって美味。不飽和脂肪酸等が豊富。はまち(ぶり)にはうま味成分のイノシン酸が多く含まれており、イノシン酸の減少の速度も遅いため、氷蔵保存(0℃)で1週間程度おいしく食べられる。

  • グルタミン酸含有量(mg/100g):5~9
  • イノシン酸含有量(mg/100g):230~290

いわし

DHA、EPAなどの不飽和脂肪酸が豊富で、古くから日本だけでなく世界中で人々の貴重な栄養源として重宝されていた。イタリア、スペイン料理のオリーブオイルで漬けたアンチョビや塩漬けなどが有名。イタリアやスペインでは、同じくグルタミン酸の豊富なトマトソースを組み合わせたピザやパスタ、パエリヤ、日本ではイワシのつみれ汁や梅煮などが古くから食されてきた。いずれもうま味が良く活かされている東西の代表的な食べ物だ。
庶民の魚から高級魚へと変わるのではないかと言われるほど世界的に漁獲量が激減しており、社会問題となっている。

  • グルタミン酸含有量(mg/100g):10~20
  • イノシン酸含有量(mg/100g):280

まぐろ

サバ科マグロ属の魚の総称。世界中の大洋に生息し、食用とされている。刺身、寿司ネタとして日本をはじめ世界で人気のある魚で、ツナ缶詰の加工品としても有名。イノシン酸は赤身に多く含まれる。世界的な寿司ブームの影響で漁獲量が激減しており、世界的に深刻な問題となっている。

  • グルタミン酸含有量(mg/100g):1~10
  • イノシン酸含有量(mg/100g):250~360

たい(まだい)

タイ科の海水魚の総称。「めでたい」の語呂にかけ縁起のよい魚とされ、お祝い事で食されることが多い。刺身、塩焼き、煮付け、昆布締め、蒸し焼き、混ぜご飯などで調理される。「腐ってもタイ」といわれる所以は、死後もイノシン酸が分解されにくく、うま味が持続しおいしく食べられることからきている。

  • グルタミン酸含有量(mg/100g):10
  • イノシン酸含有量(mg/100g):180~300

あじ

全世界の熱帯・温帯に生息し、広い範囲で食される魚。まあじ、たいせいようあじ、むろあじ等の50種類ほどに及ぶ。日本で漁獲されるあじのほとんどはまあじである。ぜいごと呼ばれるかたくて鋭いうろこが特徴。うま味成分のイノシン酸が多く含まれている。

  • グルタミン酸含有量(mg/100g):4~13
  • イノシン酸含有量(mg/100g):270~330

かつお

春に九州から北海道南部に北上し、秋には南下する太平洋の回遊魚。初夏に獲れるものを初がつおと言い、脂質が少なくさっぱりとした味わいで珍重される。秋に獲れる戻りがつおの方が脂はのっている。大型漁船による沖合漁業が盛んで、漁獲後すぐに冷凍され、一年中食すことができる。刺身、たたき、焼き魚、角煮等の生食でも加熱調理のどちらにもむいており、イノシン酸が多く、かつお節の原料になる赤身の魚。

  • グルタミン酸含有量(mg/100g):1~10
  • イノシン酸含有量(mg/100g):130~270

さわら

(鰆) 白身魚の中では脂が7~10%とやや多く柔らかい肉質。出世魚で体長50cmまでをさごし、70cmをなごし、それ以上をさわらと呼ぶ。北海道南部から朝鮮半島、オーストラリア沿岸に生息している。冬季には水深深くに移動し、脂がのりおいしくなる。春になると産卵のために湾内に入り、多く漁獲されるので「春の魚」と漢字で書く。うま味成分のイノシン酸が多く含まれている。

  • グルタミン酸含有量(mg/100g):3~11
  • イノシン酸含有量(mg/100g):250~280

さば(まさば)

世界的に広く分布し海外でも多く食されるサバ科の海水魚。鮮度の低下が激しいことと魚の臭みが若干強いため、しめ鯖、塩焼き、味噌煮など調理をして食べることが多い。特に秋から冬にかけて漁獲される脂ののったサバはイノシン酸の数値が高く、うま味も豊富になる。

  • グルタミン酸含有量(mg/100g):10〜30
  • イノシン酸含有量(mg/100g):280

た ら

タラ科の魚の総称であり、白身魚で、イノシン酸が分解される速度が他の魚類に比べて早い。味は淡白なので煮魚など味付けをして食べるほか、イギリスのフィッシュ&チップス、フィレオフィッシュ・バーガーのように、フライにして食されることも多い。

  • グルタミン酸含有量(mg/100g):5~10
  • イノシン酸含有量(mg/100g):180

牡蠣(かき)

イタボガキ科の二枚貝の総称。世界的に生食のできる魚介として古くから親しまれている。秋から冬にかけてが旬で、グルタミン酸も増す。海のミルクといわれるほどに栄養価が高く、アミノ酸の他にも亜鉛を多く含み、味覚障害にも効果がある。かきは、中華系調味料のオイスターソースの原料。

  • グルタミン酸含有量(mg/100g):40~150
  • イノシン酸含有量(mg/100g):20

しらす干し

しらす干しは主にまいわしやかたくちいわしの稚魚を取りたての新鮮なうちに塩水で茹でる、あるいは蒸したのちに干して作られる。うま味成分はイノシン酸とグルタミン酸とが含まれている。生の魚は、時間が経過するとうま味成分のイノシン酸が減ってしまうが、しらす干しは漁獲後すぐに加熱することでイノシン酸を分解する酵素の働きを抑えるため、イノシン酸が多く残っている。

  • グルタミン酸含有量(mg/100g):40
  • イノシン酸含有量(mg/100g):240

アンチョビ

小型のかたくちいわしを3枚におろし、塩蔵、熟成し、オリーブ油やひまわり油に漬けたもの。塩蔵熟成期間中にイノシン酸は分解され、消失してしまう。一方カタクチイワシに含まれるタンパク質が熟成により分解され、グルタミン酸をはじめとしたアミノ酸が増し、うま味の強い食品が出来上がる。うま味もあるが塩味も強い。イタリアンのパスタやピザに 隠し味程度使用するとうま味がグーンとアップし、奥行きのある味に仕上がる。

  • グルタミン酸含有量(mg/100g):630
  • イノシン酸含有量(mg/100g):0