うま味とは、料理のおいしさを生む大切な役割を果たす味であり、甘味、酸味、塩味、苦味と並ぶ基本味の一つです。おいしさとうま味はしばしば混同されがちですが、うま味はあくまでも味の要素のひとつ。砂糖の甘味がスクロース、梅干の酸味がクエン酸によるように、うま味はアミノ酸であるグルタミン酸、イノシン酸やグアニル酸という核酸によってもたらされます。グルタミン酸は昆布、チーズ、トマトなどの多くの食品に、醤油や味噌などの発酵食品、また母乳やヒトの体にも含まれています。イノシン酸は肉や魚介類に、グアニル酸は干したキノコ類に多く含まれています。全体の味を調和し、素材の持ち味を引き出し、まろやかな心地よさを残すうま味はUMAMIとして国際的にも知られています。
「うま味」と表記します。うまみにはその他「旨味」という表記もありますが、こちらはより広い範囲でおいしさを意味します。1908年に池田菊苗博士が、昆布だしの主要な味の成分がグルタミン酸であることを発見し、その味を「うま味」と名づけ、「旨味」と区別しています。そしてうま味は基本味の一つであることを論文(日本化学会誌 1909年)に残しています。
うま味インフォメーションセンターウェブサイトの食材別うま味情報(食材のうま味物質のデータと説明)ページで、肉類・魚介類・野菜等 約30品目のうま味数値をご紹介しております。なお、自然食材の分析値のため、数値には個体差がありますことをご了承ください。
MSG(Monosodium Glutamate=グルタミン酸ナトリウム)とうま味食材に含まれるグルタミン酸はほぼ同一のものですが、MSGはサトウキビなどの天然原料を用いて発酵法で作られており、核酸等のうま味物質と調合されたものはうま味調味料として販売されています。一方、うま味はトマト、チーズ、生ハムなどの多くの食材に含まれる呈味物質です。
乾燥した昆布の表面には白い粉が付いていることがあります。グルタミン酸と誤解されることがありますが、これはマンニットと呼ばれる弱い甘味をもつ糖類で、昆布の味の要素のひとつとされています。
チーズは熟成が進むとアミノ酸の量が増え、水分が減少します。この白いかたまりにはグルタミン酸も含まれていますが、主にロイシンやイソロイシン、バリンなどの水に溶けにくいアミノ酸がかたまりとなって現れたものです。
生ハムのうま味はイノシン酸ではなく、グルタミン酸です。生ハムはかつお節と同様に動物性の食品ですが、イノシン酸はほとんど含まれていません。
イノシン酸は動物の筋肉中にエネルギー源として存在する物質(ATP)が、死後、酵素の働きによって分解されることにより生じる物質です。分解が進みすぎると、イノシン酸はうま味をもたない別の物質に変化します。そのため、イノシン酸の量は、死後、いったん増加してから減少します。
生の豚肉にはイノシン酸が豊富に含まれていますが、生ハムは豚肉を塩漬けしたあと長期間(1、2 年)熟成させています。そのあいだにイノシン酸は減少し、食べるころにはほとんど残っていません。一方で、熟成の過程でグルタミン酸が増加し、さらに乾燥によって濃縮されます。そのため、イノシン酸の減少を補ってあまりあるほどのうま味の強い食材になるのです。
かつお節や煮干しの主なうま味成分はイノシン酸です。一般的に、干物を含め、魚は死後時間の経過とともに酵素の働きによりイノシン酸は分解され、うま味を持たない別の物質に変化していきます。一方、かつお節や煮干しはその製造工程において100℃近くで加熱(煮熟)されます。この加熱により、イノシン酸を分解する酵素の働きは失われ、イノシン酸は変化することなく保たれています。
なお、かつお節や煮干しにはグルタミン酸も豊富に含まれています。
生のきのこには、グアニル酸はほとんど含まれていません。グアニル酸は、核酸という遺伝子を構成する物質の一種です。生のきのこには、グアニル酸に変化するまえの物質が細胞のなかに守られた状態で存在しています。生のきのこを干したり冷凍したりすると細胞壁が壊れ、酵素の働きによりグアニル酸に変化します。
なお、生のきのこにはグルタミン酸も豊富に含まれています。
トマトや昆布などの食物に含まれるグルタミン酸と調味料に入っているグルタミン酸は同じ物質です。
ほとんどの食物にはナトリウムやカリウム、マグネシウムなどのミネラルが含まれています。そのため、トマトや昆布に含まれるグルタミン酸も、調味料として使われているグルタミン酸と同様に、実際にはグルタミン酸ナトリウムやグルタミン酸カリウムといったグルタミン酸塩として存在しているのです。
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