今月のUmamiMama Says… 2025年3月
2025.03.15

世界中の一流シェフから「UmamiMama“うま味ママ”」の愛称で親しまれている うま味研究者の二宮くみ子博士が語る“ちょっとためになる”うま味のお話「UmamiMama Says…」。UICロンドン発の人気インスタグラム記事です。
3月は、人気のシーフードに含まれるアミノ酸についてのお話です。
***
食材のうま味成分を分析する際には、グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸といった主要なうま味成分以外にも、幅広い遊離アミノ酸を分析します。UICのうま味データベースにもグルタミン酸以外の複数のアミノ酸データを掲載しています。その理由は、その食材のもつ複雑な味覚特性を知るためです。
例えば、新鮮な牡蠣。英国ケント州ウィスタブルでは毎年7月に「オイスターフェスティバル」が開催されます。レモンをキュッと絞り、一口で味わう生牡蠣の魅力には格別なものがあります。クリーミーな食感に、うま味と甘味が重なり、濃厚で奥深い味わい。そして、ほのかな苦味を感じさせるアミノ酸、アルギニンが絶妙なバランスで含まれており、牡蠣の味わいに深みを加えています。
2月末から3月初めに英国イースト・サセックス州ライ湾で開催される「ライ湾ホタテ祭(Rye Bay Scallop Week)」でも同様の体験ができます。
新鮮な生ホタテのスライスにライム果汁をかけて味わったり、寿司のトッピングにしたりするのは、当地で人気の楽しみ方の一つ。生ホタテを口に含むと、優しい甘味がふわっと広がります。この甘味の正体は、グリシンやアラニンといったアミノ酸。特にグリシンは、あらゆる魚介類の中でも特にホタテに豊富に含まれています。
うま味成分であるグルタミン酸やアスパラギン酸、甘味を生み出すグリシンやアラニンだけでなく、ホタテにも苦味をもたらすアミノ酸、アルギニンが多く含まれています。アルギニンは単なる苦味成分ではありません。味に複雑さやコクを与えて、ホタテの美味しさをさらに引き立てているのです。
一方、地中海料理でよく使われるタコは、ホタテや牡蠣と比べると、うま味や甘味、苦味に関わるアミノ酸の含有量が極めて少なく、味自体は淡泊。その分、弾力のある食感がタコの味わいを特徴づけています。グリルしたり、茹でてスライスしてサラダに加えたり、その独特のしっかりした食感が美味しさのポイントです。
このように、食べ物の美味しさは、うま味だけで決まるわけではありません。甘味や苦味をもたらすアミノ酸、核酸関連物質、ミネラルなどが複雑に絡み合うことで、それぞれの食材ならではの独特な味わいが生まれるのです。
遊離アミノ酸の分析でこんなことも分かるのです。味わいの探求には尽きない魅力がありますね。
そう思いませんか?