うま味インフォメーションセンター

活動報告

座談会形式でうま味を再確認~千葉県で管理栄養士・栄養士にうま味講義

2025.02.28

2025年2月28日、うま味インフォメーションセンター(UIC)は千葉県の「東葛北部在宅栄養士会」からのお声掛けに応じ、うま味講座を行いました。参加者は、柏、松戸、我孫子、流山、野田の各市で活躍する管理栄養士・栄養士の皆さんです。
日頃から生活者の栄養指導にあたっている皆さんですので、だしの良さ、和食を活かした健康な食生活については既にご承知ですが、この日は原点に立ち返ってそれぞれのだしをしっかり味わい、うま味の味と性質を確認していただきました。

UIC木戸妥恵理事(中央)

今回の講義は講師の木戸妥恵理事を囲んで座談会のような形式で進めました。
前半では、うま味発見の歴史や、うま味(基本味)と旨み(おいしさを示す言葉)は同音異義語であるといった基礎知識をお話した上で、ドライトマトや数種のだしのテイスティングを通して第五の味覚であるうま味を認識していただき、その特徴を確認していただきました。
ドライトマトをじっくり味わった皆さんは、「まるみを感じる」「舌が包まれた感じ」「味噌とおなじ味がする」、「うま味調味料の味がする」「唾液がたくさん出てくる」など、うま味の特徴を非常に繊細に感じ取っていました。

その後のだしのテイスティングでは、通常は“一番だし”として合わせて味わうことが多い“鰹だし”と“昆布だし”をそれぞれ単体で味わい、合わせて飲んだときの相乗効果に実感していただきました。さらに、塩分控えめの味噌汁を使って「うま味でおいしく減塩」できることを確かめました。

後半は、うま味の健康効果、特に高齢者に見られる味覚障害や低栄養の問題に対する、うま味を利用したアプローチについてお話しました。
65歳以上の人75人を対象にしたある研究では、対象者の37%に味覚障害がみられました。味わう力は体調や食欲とも関係します。味覚障害のある人は無い人に比べて、体調不良や食欲低下を訴える人が多く、摂取する食品数も減少しています。
Satoh-Kuriwada S, et al. Hyposalivation strongly influences hypogeusia in the elderly: Journal of Health Science, 55: 689-698, 2009.

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また、味覚障害のある方に多く見られるのが口中の乾き。唾液がなくなると、味を感じることができなくなります。そうなると、食べ物がおいしく感じなくなり、食欲低下や体調不良低下につながってしまいます。高齢者が「食べ物がおいしくない」と言っている時には、ドライマウスの状態になっている可能性があります。

メモを取りつつ注意深くだしをテイスティングする皆さん

木戸理事はドライマウスのリハビリとして、うま味がもつ「唾液で口中が潤わせる」性質を利用した方法を紹介し、参加者に昆布水を試飲していただきました。
参加者の皆さんからは使用した昆布の種類や量について質問がありました。
お好きな昆布を30g程度500mlの水に1晩冷蔵します。今回は利尻昆布を使用しました。1日10回、30秒ほど口に含んで味覚を刺激します(2-3日で使い切り)。

今回の参加者は、保健センターでの乳児検診や、病院等での高齢者のフレイル予防など、特定保健指導や栄養相談を通じて地域の皆さんの健康のために尽力されている管理栄養士・栄養士の皆さんでした。第一線で働く皆さんにとっては、身近な話も多かったことと思いますが、栄養のプロフェッショナルである方々が熱心にメモをとり、経験に照らし合わせて話し合って理解を深める姿は大変印象的でした。
栄養士会から地域の方へ、そしてその周りの皆さんへと、うま味についての正しい知識や、うま味を毎日の食生活に活かす方法が広がっていくことを願っています。