うま味インフォメーションセンター

活動報告

感覚を研ぎ澄ましてうま味を味わう~東北大学で「『だし』と『うま味』の話」

2024.11.21

11月21日、東北大学でうま味インフォメーションセンター(UIC)による講義「『だし』と『うま味』の話」が行われました。
この講義は、同大学の正規の授業である「基礎ゼミ 和食の文化を科学的に理解する」の一環です。同大学の教授陣のほか、企業や他大学などの外部団体も講師を務める全15回のゼミで、東北大学文学部教授でUIC副理事長である坂井信之教授が全体の担当教員になっています。UICは、中間地点にあたる第8回の講義を担当しました。講師を務めたのは木戸妥恵理事です。

UIC木戸理事

木戸理事は、学生の皆さんの知的好奇心を刺激し、「うま味について、さらに科学的に知りたい」と思ってもらうことを念頭に置いて講義を構成しました。
そこで身近なうま味食品であり、和食にかかせない“だし”に着目。だしと切っても切り離せない「うま味」について掘り下げていく内容としました。
座学だけでなく実習を多めに取り入れ、五感をフルに稼働してうま味を実感してもらうよう工夫がなされています。

講義では、代表的なだし素材である昆布、鰹節、煮干し、干し椎茸の実物を提示し、さわったり匂いを嗅いだりしたうえで、実際に教室でだしを作製しました。
学生はできあがった4つのだしを味わい、うま味の性質である「舌全体に広がる」「他の味より持続性がある」「唾液の分泌を促す」を理解しました。
さらに、昆布だしとかつおだし、昆布だしと煮干しおよび椎茸だしの組合せで、アミノ酸系のうま味成分グルタミン酸と、核酸系のうま味成分イノシン酸・グアニル酸による「うま味の相乗効果」を体感する実習を行い、それぞれのだしの特徴を自分の言葉で表現するという課題に取り組みました。

様々なだし素材を観察しました

実習の後半では、タイプの異なる二つの味噌、仙台味噌と八丁味噌と4つのだしの組合せで、好みの味噌汁作りに挑戦したほか、うま味のもつ健康効果として、うま味を効かせると減塩しても食べ物がおいしくなることを、塩もみにしたきゅうりを作って体感し、その感想を言語化してもらいました。

この充実した内容の当講義に参加したのは、薬学部、教育学部、農学部、医学部、理学部、文学部など様々な学部の皆さんです。
自分の言葉でだしやうま味を表現するために、感覚を研ぎ澄まし、におい、味、口に含んだ時の風味(口中香)を感じながら、真摯にかつ楽しんで課題に取り組んでいました。

講義のフィードバックには、それぞれの学部の学生らしい感想が見られました。
その一部を紹介します。
  ・椎茸だしを初めて味わえてよかった。知っている味でした。(農学部)
  ・うま味(物質)の化学反応についてもっと知りたい(薬学部)
  ・「だしを取る」「だしを引く」の言葉の違いは興味深かった(文学部)
  ・知識としてだけでなく、体験としてうま味を学べたのはよかった(教育学部)
  ・うま味(物質)の最も出る温度とその理由を科学的に知りたい(理学部)
  ・塩が少なくても、うま味があれば美味しく感じるということに驚いた(医学部)

「だしの作り方を学べてよかった。それぞれのだし単体の味を比較しながら味わうことができてよかった」と言う声は、全学部に共通して多くの学生から聞かれました。

だしとうま味について、深く考える機会になったことと思います。
「だしやうま味の良さを、誰にどのように伝えたいですか」という問いかけに対する回答をひとつ紹介します。
「普段の食に満ち足りなさを感じる人に伝えたい」として、「だしやうま味の良さはその充実感にあると考える。だしは香りとうま味が口の中に長く残ることで充足感を与えてくれる。
この充足感はこの飽食の時代に置いて、貴重なだしやうま味の良さであると考える」

若い皆さんの素直な言葉に触れ、私たちもたいへん勉強になりました。
だしやうま味の良さを今後の生活で活かし、それを周りの人にも伝えていただけたらと思います。