科学で紐解く世界の食文化~早稲田大学の留学生と日本人学生にうま味講義
2024.07.03
世界には多様な食文化があります。食材や味つけ、「おいしさ」を決める要素は、文化により、また個人により違ってきます。しかし、基本の五味は世界共通です。食文化は違えども、科学的に言えば、五味という刺激に対する身体の反応は基本的には同じです。
2024年7月3日、うま味インフォメーションセンターは早稲田大学で世界の食文化をサイエンス面からとらえる講義イベント「うま味の真髄に迫る~世界の食を科学する」を行いました。主催は同大学のICC(異文化交流センター)*、共催は味の素株式会社です。
*学生が中心となって様々なイベントを企画・運営する異文化交流のコミュニティ。世界中から留学生が集まる同大の環境を活かして、世界の文化への相互理解を深めながら、新たな価値観や文化を生み出すことを目指しています。
イベントのきっかけは、ICCの学生スタッフが留学先での料理と和食との味わいの違いに驚きをもったこと。そして、興味をもって調べてみたところ、味付けに違いこそあれ、現地の料理も、うま味物質であるグルタミン酸を始めとした、うま味が活用された料理であることを知ったそうです。異なる食文化を理解するには、「歴史や地理的背景に注目すること以外に、科学的な見方も重要ではないか」「(中でも)うま味は世界の様々な食文化の理解に通ずる要素であるとされていながら、その真髄を理解している方は多くないのではないか」
彼のそのような思いを背景に、早稲田大学ICCから味の素社と当センターにイベントの協力依頼がありました。
「専門家による解説を聴き、食という文化要素をうま味という観点から“科学”したい。」
イベントは参加が抽選になるほどの人気で、会場となったガーデンホールには日本人学生と留学生約40人が集まりました。
講師を務めたのはうま味インフォメーションセンターコンサルタントの二宮くみ子博士です。
講義は日本語で行われましたが、留学生の理解を助けるために、ステージ両側に日本語と英語のプレゼンテーション資料が同時投影されました。
二宮博士は、スープストックなど海外のだしと日本のだしとの違いのポイントなどを、模型を使ってわかりやすく説明。うま味は日本で発見された味覚であるが、世界中の人が感じることができ、世界中の食文化で活用されている味であることを説明しました。
また、赤ちゃんが「甘味、酸味、苦味、うま味」*を味わった時の表情の変化の画像を示し、どこの国の赤ちゃんも基本味に対して同じ反応をすると語りました。
*赤ちゃんの舌には塩味を感じる機能がないため、四味での実験をしています。
学生の皆さんは二宮博士の指導のもと、実際にドライトマトでうま味を舌にとらえて認識したのを始め、昆布だしとかつおだしを使ったうま味の相乗効果の体験、野菜ブイヨンを用いた減塩効果の体験などを通じて、うま味が食品の味わいに大きく影響することを実感しました。
イベントの後半では、テーブルごとのディスカッションと質疑応答が行われました。様々な食文化をもつ皆さんが、それぞれの国の料理のうま味を説明するなどして、うま味や五味について活発に話し合っていました。
講義後に寄せられた感想には、「世界各国にうま味食材があることが印象に残った」、「相乗効果に驚いた」、「体験を交えた講義でたいへん分かりやすかった」等、多くの感想をいただきました。
日本で発見された第五の味覚「うま味」は、和食の特徴的な要素の一つではありますが、和食にしか存在しない味ではありません。世界中の料理にうま味は使われています。
日本の学生と世界中から来日した留学生がともに学ぶ、日本を代表する大学のひとつである早稲田大学で、世界の料理に共通の要素であるうま味の講義と体験セッションを提供できたことをたいへん嬉しく思います。