うま味インフォメーションセンター

活動報告

書籍「Umami - Taste for Health」が発刊されました

2023.11.01

ドイツのサイエンス・テクノロジー・医学系出版社であるシュプリンガー・ネイチャー社(Springer Science+Business Media, Springer)から、うま味と栄養や健康の関係を生理学的にとらえた書籍「Umami - Taste for Health」(Ana San Gabriel、Tia M. Rains、Gary Beauchamp 編)が発行されました。

うま味が発見されて100年余り。この第5の味覚に対して世界中で様々な研究がなされてきました。最近の研究では、うま味物質はおいしさを作りだす要素であるだけではなく、減塩、だ液の分泌促進、満腹感の促進といった栄養・健康面での効果も有することがわかってきました。しかし、「うま味」と「栄養」、「健康」の関係については、まだあまり解明されていないのが現状です。
この本はうま味の科学を追及して生きた研究者と、うま味を深く理解してきたシェフたちの寄稿により完成しました。うま味と私たちの健康についての生理学的な概論に加えて、調理における実用的な活用方法についても解説した興味深い構成になっています。書籍化には、グルタミン酸とうま味の有益性を世界に発信する国際団体IGIS が協力しています。
※ The International Glutamate Information Service (IGIS)。 https://glutamate.org/about/

本書「Umami - Taste for Health」は印刷書籍の他、多くの人に読んでいただけるよう無料で閲覧できる電子書籍としても発行されました。どなたでも下記のURLからお読みいただけます。
https://link.springer.com/book/10.1007/978-3-031-32692-9

各章のタイトルと執筆者は次の通り(執筆者の所属は出版時)  
1. 「序章:味覚としてのうま味」ギャリー・ビーチャム  
Introduction: Umami as a Taste Percept:    
by Gary Beauchamp (Monell Chemical Senses Center, Philadelphia, PA, USA)

2. 「うま味とMSG」吉田竜介、二ノ宮裕三  
Umami and MSG:  
by Ryusuke Yoshida (Okayama University, Okayama, Japan)    
Yuzo Ninomiya (Kyushu University, Fukuoka, Japan)

3. 「味蕾から大脳皮質へのうま味のシグナル伝達」   ユージンR. ディレイ、ステファン D. ローパー  
Umami Taste Signaling from the Taste Bud to Cortex:  
by Eugene R. Delay (Regis University, Denver, CO, USA, Emeritus Faculty at the University of Vermont in Burlington, Burlington, VT, USA)    
Stephen D. Roper (Department of Physiology and Biophysics and the Department of Otolaryngology, Miller School of Medicine, University of Miami, Coral Gables, FL, USA)

4. 「うま味と塩味: 相互に引き立て合う2つの味覚」   オーブリー・ダントマン、ソーユァン・リー  
Umami and Salty:  A Cooperative Pair:    
by Aubrey Dunteman (University of Illinois, Urbana, IL, USA)    
Soo-Yeun Lee (University of Illinois, Urbana, IL, USA)

5. 「うま味と満腹感」マーチンR. ヨ-マン  
Umami and Satiety:  
by Martin R. Yeomans (University of Sussex, Brighton, UK)    

6. 「うま味:幼児期における先天的/経験的な味覚感知と満腹感効果」   アナ・サン・ガブリエル、ジュリー A. メンネラ  
Umami Taste: Inborn and Experiential Effects on Taste Acceptance and Satiation During Infancy:    
by Ana San Gabriel (Global Communications, Ajinomoto Co., Inc., Tokyo, Japan)  
Julie A. Mennella (Monell Chemical Senses Center, Philadelphia, PA, USA)

7. 「うま味と健康的なエイジング」   河月稔(鳥取大学)、浦上克哉(鳥取大学)
Umami and Healthy Aging:    
by Minoru Kouzuki (Tottori University, Tottori, Japan)    
Katsuya Urakami (Tottori University, Tottori, Japan)

8. 「健康的な食事の要素としてうま味を考える」   アナ・サン・ガブリエル、ティアM.レインズ  
Umami Taste as a Component of Healthy Diets:    
by Ana San Gabriel (Global Communications, Ajinomoto Co., Inc., Tokyo, Japan)  
Tia M. Rains (Research and Development, Ajinomoto Health & Nutrition North America, Itasca, IL, USA)

9. 「カリノロジー®(調理科学)の実践:うま味が調理技術と調理科学に貢献すること」   クリス・コーイートク、ローレン・ミラー、ジョナサン・ドイチュ  
Practicalities from Culinology®: How Umami Can Contribute to Culinary Arts and Sciences:    
by Chris Koetke (Ajinomoto Health & Nutrition North America, Itasca, IL, USA),    
Lauren Miller (Drexel University, Philadelphia, PA, USA)    
Jonathan Deutsch (Drexel University, Philadelphia, PA, USA)

うま味インフォメーションセンターの会員アナ・サン・ガブリエル博士も編集者として参画し、6章および8章を執筆しています。
「スプリンガー・ネイチャー社のFood & Healthシリーズの1冊としてこの本が発行されたことをとても嬉しく思います。この本はシンポジウムのまとめではなく、うま味研究に取り組む皆さんが新たに執筆したものです。
うま味は私たちの健康的な生活に役立てられるものです。母乳に含まれることはもとより、野菜の苦味の軽減、満腹感の促進、おいしい減塩など、乳幼児から高齢者までいろいろな健康効果があります。ぜひ、多くの皆さんに読んでいただければと思います。」

UICのアナ・サン・ガブリエル博士