キーワードは「こっそり減塩」!?長く続けるコツとは~日本栄養士会後援UMAMIウェビナー2022
2022.02.15
うま味インフォメーションセンター(UIC)は2022年2月15日、ウェビナー「うま味を活用したおいしい減塩~『味覚』の重要性を考えよう」(後援:(公社)日本栄養士会)を開催しました。
昨年に続いて2度目の開催となる本年は、山陰労災病院 第三循環器内科部長の水田栄之助先生、料理家・栄養士で食育アドバイザーでもあるほりえさちこ先生、UICコンサルタントの二宮くみ子博士が登壇。臨床、調理、科学の3つの視点から「味覚」「減塩」「健康」についての講演を展開しました。
健康寿命を延ばすためには減塩が1つの大きな課題です。ただ、良いとわかっていても、続けることがなかなか難しいのも「減塩」です。
水田先生は、「うま味と減塩そして味覚の深い関係」のタイトルで講演。
高血圧・腎臓病などの患者さんには、塩味を感じにくい傾向があり、その結果、濃い味付けを好む傾向が見られるそう。「味覚リセット」教育入院を実施することで、味覚の感度が改善し、減塩食に慣れる事例などお話いただきました。
また減塩は、自分ではコントロールが難しい加工食品などからの食塩摂取を抑えるための社会的な取り組みも大切です。その成功例としてイギリスのパンでの減塩取組を紹介。また先生ご自身が地元の企業と連携して開発した、うま味を活用したおいしい減塩干物についてもお話されました。「減塩」と聞くとおいしくなさそうといった先入観もあるため、「減塩」のキーワードを使わなかったのもポイントの1つだったとか。この干物は、地元の給食などでも取り入れられているそうです。
「味覚の感度を正常に保つこと。そのためには薄味になれることが大切。気が付かないよう徐々にこっそり減塩にしていくことがカギです。」と話されました。参加者からは、こっそり減塩や、高齢者では減塩と栄養摂取のどちらに重きを置くのか考えるといった点に納得の声が多く聞かれました。
雑誌やWEB/SNSで人気の料理家ほりえさちこ先生は「おぼえておきたい簡単調理テク~だし、うま味の活用」と題して、うま味の特徴や家庭料理での上手な使い方を、明日から取り入れたくなる料理テクを交えて語りました。
うま味を活用して長男の野菜嫌いを克服したご自身の育児経験にも触れながら、うま味の特徴を活かしたアイデアあふれるレシピを紹介。“毎日の調理でできる「はしっこ野菜」で作る野菜だしや、冷凍トマトの意外な活用方法”など、うま味食材を上手に使った調理テクニックの数々を披露し、参加者から「なるほど!」「このレシピはぜひ家でやってみたい」という声が集まりました。
パネルディスカッションの冒頭では、“うま味と減塩”に関わる事例紹介として、UICコンサルタントの二宮くみ子博士が、チキンスープやみそ汁などの汁物と塩分、うま味の関係を科学的に解説。食塩濃度が低くても、適度なうま味を足すことで満足感が増すこと、塩味とうま味は、お互いを引き立て合うこと等を語りました。
アメリカ、フランス、日本の汁物摂取頻度を比較した表を示し、汁物摂取頻度と肥満の関係についての最新科学を解説。「欧米と日本の汁物摂取の頻度が高いほど、肥満の傾向が低いという疫学調査の結果が得られています。汁物をよく取る人ほど、肥満係数BMIや腹囲、腹囲とのヒップの周径比が小さい傾向があります」と語り、汁物の食塩を抑え、うま味で上手においしさをカバーするのが大事だと述べました。
その後、司会の村上千砂さんの進行で減塩を長続きさせるポイント*1や、若い人に減塩を意識してもらうコツ*2などを、改めて話し合いました。本年も内容の濃いウェビナーをお届けすることができ、200人を超える参加者の皆様からご好評をいただきました。
ウェビナーの様子は、以下のYoutube でご覧いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=Wt-HfrGeMoo
*1:減塩ということばに対するネガティブなイメージが強いので、減塩を意識させないことが長続きの秘訣。そして「おいしく」というのが大事。(水田先生)。
*2:一生分食べた塩の量が病気になるかどうかを左右します。それを若いうちから意識してほしい。家庭の食事にうま味を効かせて減塩にすれば、家族みんなで「おいしい減塩」の習慣をつけられます。(水田先生)
若い人は減塩と言ってもピンとこない部分もあるかもしれませんが、塩分が高いとごはんを食べすぎたり、むくみやすくなったりするという「美容」の面から減塩を伝えると若い人にも伝えられるのでは。(ほりえ先生)
うま味を意識した食事がよいと言っても、そもそもうま味がどんな味かわかっていなかったら、意識のしようがないですよね。学校でもうま味を体験する指導をしていただき、うま味を実感する体験されるといいかと思います。(二宮博士)