【開催報告】2014うま味レクチャー in 東京 「世界をつなぐ"UMAMI"のちから」 -うま味を知る! 料理は変わる!-
2014.11.21
日 時 | : | 平成26年10月19日(日)13時~16時45分 |
場 所 | : | 華調理製菓専門学校 東京都台東区根岸1-1-12 |
参加者 | : | 125名 |
登壇者 | : | うま味トーク&デモンストレーション 京都「菊乃井」三代目主人 村田 吉弘氏 「Wakiya一笑美茶樓」オーナーシェフ 脇屋 友詞氏 「神戸北野ホテル」総支配人・総料理長 山口 浩氏 食材選定 「日本橋ゆかり」三代目若主人 野永 喜三夫氏 「トゥーランドット臥龍居」料理長 小澤 善文氏 (ミクニマルノウチ料理長 佐々木氏は都合により欠席) うま味レクチャー&コメンテーター 「Attimo」(ブラジル・サンパウロ)シェフ 伊澤 彩子氏 日本獣医生命科学大学客員教授 佐藤 秀美氏 NPO法人うま味インフォメーションセンター理事 二宮 くみ子 |
報告者 | : | NPO法人うま味インフォメーションセンター 渡辺 章 |
NPO法人うま味インフォメーションセンターは、華調理製菓専門学校(東京都台東区)との共催で、10月19日(日)午後1時より、「2014うま味レクチャー in 東京」を開催いたしました。
本レクチャーは、新潟(新潟調理師専門学校)、福岡(中村調理製菓専門学校)、浜松(東海調理製菓専門学校)に続いて4回目となる調理師学校との共催のイベントで、料理人、シェフ、栄養士、調理師学校教職員、料理研究家など、食の専門家の方々を対象に、うま味についてのレクチャーと、日本料理、中国料理、フランス料理の第一人者によるうま味トークとその地域の食材を使った調理デモンストレーションで、うま味を理解していただく内容です。
今回はこれまでとは異なり、うま味レシピに使用する食材は、次代を担う若手シェフが、江戸野菜や東京近郊の食材の中から選定し提案しています。
また、ブラジルで活躍中の日本人シェフによるうま味トーク、そして専門家も加わり、「うま味を知る! 料理は変わる!」をテーマにパネルディスカッションも行い、参加された方々に、うま味についての理解を深めていただきました。
開会に際し、当センター山本隆理事長および学校法人華学園坂本知栄子理事長による主催者挨拶があり、続いて当センター二宮理事によるうま味レクチャーを行いました。
うま味レクチャーでは、うま味の特徴や機能など基本情報を中心に、うま味体験を交えて講義いたしました。
はじめに"うまみ"には二つの意味があり、一つは感覚的な美味しさの程度を表す「旨み(あるいは旨味)」、もう一つは、科学的視点からみた、ある特定の物質の味を表す「うま味」で、同じ発音のため混同して使われることがあるが、本日のレクチャーは、普遍的で多くの食物に共通する味であり、5つの基本味の一つである「うま味」について正しく理解していただくことを目的としていますと話しました。
次に、代表的なうま味物質は、グルタミン酸塩(えん)、イノシン酸塩(えん)、グアニル酸塩(えん)で、甘味物質(ショ糖)、酸味物質(酢酸、クエン酸)等と並べて説明、さらにうま味発見について解説しました。
うま味の三つの特徴である、「持続性がある」、「舌全体に広がる」、「唾液の分泌を促す」については、プチトマトを使ったうま味体験を交えて解説しました。また、うま味の相乗効果、添加効果について解説し、うま味の添加効果については、野菜ブイヨンを使い、食塩のみの添加と食塩+うま味の添加を飲み比べて、うま味の効果を体感していただきました。
最後に、うま味は世界共通の味で、世界中にうま味を活かした伝統調味料や食材があることを、代表的な調味料や食材を紹介して説明いたしました。
続いて、日本料理の村田吉弘氏、中国料理の脇屋友詞氏、フランス料理の山口浩氏による「うま味トーク&デモンストレーション」を行いました。うま味レシピに使用する食材は、江戸野菜や東京近郊の食材から次代を担う若手シェフが選定し提案いたしました。
最初は日本料理です。登壇するのは、京都「菊乃井」三代目主人村田吉弘氏、食材選定は、「日本橋ゆかり」三代目若主人野永喜三夫氏で、東京シャモ、金町こかぶ、東京産プチトマト乾燥品(ドライトマト)などを選定し提案しました。
始めに、一番だしの原理でもあるうま味の相乗効果について、昆布だしとかつお節使った体験を行いました。参加者に配られた昆布だしをまず半分だけ飲み、次にかつお節を口に含んで良く噛み、その後にもう一度残った昆布だしを飲むと、最初に味わった昆布だしよりもずっと強いうま味を感じるという、うま味の相乗効果を体験しました。
次に、海外で講演される際のだしの材料についてお話をされ、海外で一番だしを引くときに必ずしも昆布やかつお節が手に入るわけではないので、その国にある食材を使ってだしを引くこともありますというお話から、ドライトマト、干しモリーユ茸、鶏ムネ肉を使ったニュースタイルだしをデモンストレーションで紹介し、試飲していただきました。後ほどの試食タイムで、このニュースタイルだしと江戸野菜金町こかぶを使い、卵白、豆乳などを材料にした白い茶碗蒸しを試食していただきます。会場からは、村田氏の新しいアイデアと調理法に驚きと感嘆の声が上がりました。
次は中国料理です。登壇するのは、「Wakiya一笑美茶樓」オーナーシェフ脇屋友詞氏、食材選定は、「トゥーランドット臥龍居」料理長小澤善文氏で、江戸前の穴子、滝野川ごぼう、干し椎茸、高月清流米などの東京産食材を選定し提案しました。
まず始めに中国料理の代表的なだしである上湯の調理デモンストレーションを行いました。金華ハム、豚スネ肉、老鶏に昆布を材料として加えることで、豚肉、鶏肉のイノシン酸と金華ハム、昆布のグルタミン酸の相乗効果により、うま味がぐっと強くなり、よりおいしい金華上湯が作られるようになったと解説し、試飲いたしました。
次に、江戸前の穴子を使い、「山椒香風魚(シャンジャオシャンフォンユイ)」(山椒と白酒の香り干し穴子)と、「陳皮?香魚(チェンピーメンシャンユイ)」(山椒と陳皮の香り穴子のオイル焼き)という、二種類の穴子の調理を披露し、これを使った「二吃香魚飯(マーチーシャンユイファン)」(二種類の穴子のうま味チャイナ雑炊)の調理デモンストレーションを行いました。東京産の食材を使った斬新なアイデアとテクニックに、会場から感嘆の声が上がりました。
最後はフランス料理です。登壇するのは「神戸北野ホテル」総支配人・総料理長の山口浩氏、食材選定は「ミクニマルノウチ」料理長佐々木章太氏ですが、佐々木シェフはご都合がつかずご欠席でしたが、ご本人からのメッセージで、秋川牛、滝野川ごぼう、きのこ類など、選定された食材を紹介しました。
レクチャーでは、始めに東京の「秋川牛」を使い、低温長時間調理の技術で、肉の柔らかな食感を保ちながらうま味を感じるという、今までにないうま味体験を参加者に体験してもらいました。さらに、この低温長時間調理した秋川牛と東京産きのこパウダーで、うま味の相乗効果を実現させ、会場からは、華麗で魔法のようなフレンチの調理テクニックに感動するだけでなく、科学的なデータに基づく調理法に驚きの声が上がっていました。
この後休憩を挟み、村田シェフの「白い茶碗蒸し-ニュースタイルだしと江戸野菜金町こかぶを使って-」、脇屋シェフの「二吃香魚飯(マーチーシャンユイファン)」(二種類の穴子のうま味チャイナ雑炊)、山口シェフの「低温長時間調理した秋川牛と東京産きのこパウダー」を全員で試食し、うま味が引き出すそれぞれの料理の美味しさに感嘆の声を上げました。
次は、ブラジル・サンパウロで活躍中の日本人シェフ伊澤彩子氏によるうま味トークで、「うま味を知る、うま味を活かす南米のシェフたち」をテーマに講演しました。
講演では、「ブラジルの伝統料理は経験的にうま味を活かしているが、ブラジルのシェフは、うま味そのものについての知識が乏しく、学ぶ機会もない。うま味を知れば、世界を驚かせるような料理が生まれてくるだろう。」と、ブラジルの伝統食フェイジョアーダや様々なうま味食材を紹介し、ブラジル料理の未来について期待をもって話しました。
続いて、村田氏、脇屋氏、山口氏が再登壇、日本獣医生命科学大学客員教授で食物学が専門の佐藤秀美先生が加わり、二宮理事のコーディネーターでパネルディスカッションを行いました。
最初に、佐藤先生から、村田氏、脇屋氏、山口氏の調理デモンストレーションについて、調理科学のデータの紹介を交えて感想とコメントの発表がありました。
村田氏については、日本料理が世界の料理になるためには何が必要かという視点から香りに注目され、抵抗の無い香りとはどういうものなのかということを、豆乳を使った白い茶碗蒸しで表現されていたとコメント、脇屋氏については、煮込んでいる時に上に浮く油が蓋の代わりになるという家庭料理では思いつかないテクニックや、いろいろな食材のうま味をたくさん集めて、どんな味になるのだろう思ったが、意外にも味はすっきりしていて驚いたと感想を述べられました。山口氏については、料理としてのうま味を分解し、自分が思った通りに再構築するという考え方で肉の美味しさを追求し、肉のうま味、柔らかさとシャンピニオンとの組み合わせによる相乗効果でそれを表現されていたというコメントがありました。
次に、二宮理事から三人のシェフそれぞれに、うま味を知ったきっかけとうま味を知ることで料理はどのように変わったかについて質問し、村田氏、脇屋氏、山口氏は、それぞれの経験をお話しされ、会場からの質問にも答えられました。
最後に、本日お手伝いをいただいたアシスタントの方々、華調理製菓専門学校の先生、学生の皆さんを紹介し、当センター西村敏英副理事長の閉会挨拶でうま味レクチャーを終了いたしました。
当日は華調理製菓専門学校の会場に125名の方が参加され、ご参加の皆さまから、日本料理、中国料理、フランス料理に共通するうま味が良く理解出来た、普段聞けないブラジルの話は興味深かった、佐藤先生のコメントに共感した、トップシェフのうま味を活かしたおいしい料理を堪能した、是非また開催して欲しい等、大変高い評価をいただきました。
当センターでは、うま味の理解・普及に向けて、このような活動をこれからも続けてまいります。引き続きご支援よろしくお願い申し上げます。