Umami - Discover the 5th taste 第五の基本味 うま味を知る
2011.01.02
日 時 | : | 2010年11月24日~26日 |
後 援 | : | Umami Information Center(UIC), Koppert Cress, Schmidt Zeevis, Nice to Meat, De Ruyter Seeds (Monsanto) |
設 営 | : | Apex Inc./ Tokyo, Fresh Retail, Scelta Mushrooms BV. |
報告者 | : | 二宮くみ子/Ana San Gabriel |
第Ⅰ部:Koppert Cress(*)
- 出席者: シェフ・フードコンサルタント・食品・香料会社 (Kikkoman, Monsanto, etc), culinary press (約 70 名)
- 目的: 味覚面でのうま味とその生理学上の機能を伝える
(*)Koppert Cress:幅広い品種のMiecrovegetableを試作・生産し、欧州、アメリカ地域で販売。おもな販売先はシェフ、レストラン、ケイタリング業者および食品産業へカラシナ(cress)類の種子の幅広い品ぞろえを提供。ユニークな味、香り、食感そして外観がユニークでシェフたちのメニュー開発に欠かせない食材として人気がある。
Dick Middelweerd シェフ(De Treeswijkhoeve )2009年2月に訪日、UICによるうま味ワークショップにも参加した。彼のプレゼンテーションでは、日本で受けた影響やそこから創り出された花ガツオをトッピングしたレシピが今では彼のレストランのトレードマークになっていると語った。
ホテルオークラの大島晃シェフは、アムステルダムで最初の日本食レストランを切り盛りし40年目を迎えた。その間どのように日本食が全く無名の存在からなじみのあるものへ変貌を遂げたかを思い起こし、「今では、ほとんどのオランダ人がすしや刺身などの人気の日本料理を知っているようになった。」と誇らしげに語りながら、毎日だしを引くために使っている数種の昆布や鰹節を見せた。
うま味インフォメーションセンター理事二宮くみ子氏はうま味の基本情報、うま味物質の発見、食材のグルタミン酸値を紹介し、トマト(未熟・完熟)と熟成期間の異なる2種のゴーダチーズの試食を行い、参加者たちはうま味の基本を学んだ。
続いてUICの学術担当としてアナ・サンガブリエルが、うま味の味覚について科学的な面からの説明を行い、うま味の知覚メカニズム、また人体内でのグルタミン酸の生理学的機能について語った。ペプチドのうま味について、グルタミン酸ほどの強いうま味はないとのコメントもあった。
Monsanto社の野菜種子事業部のプレゼンテーターは一般的なトマトの品質と肥料を変えることによって望み通りにその品質を改良できると紹介。グルタミン酸量を増やすことも、その改良のポイントの一つであり、ある品種では、トマト100g中400mgものグルタミン酸を含むものもあるということだ。
2010年7月に訪日、同じくUICでうま味を体験したGuus Vredenburgも、ビーフティーとトマト、ドライエイジドビーフとチーズなどの組み合わせによるうま味ディッシュを披露した。
印象:
オランダでの日本料理人気は確立されているが、驚いたことに、ほとんどの参加者がうま味とは別のものとしてグルタミン酸の安全性を気にしていた。
第Ⅱ部:Scelta Mushrooms Institute(*)
- 出席者: 参加者は第1部と同様
Sceltaマッシュルーム社代表のJan Klerken氏による会社と商品の概要の説明があり、マッシュルームのうま味を生かした商品展開で食品およびサプリメント産業への提供も行っていると述べた。
(*)Scelta Mushrooms
Sceltaとはイタリア語で「選択」という意味。1993年創業の同族経営で、現在では世界有数のマッシュルーム生産販売業者として生のものから冷凍・乾燥・濃縮タイプと幅広い製品ラインを展開している。うま味豊かな商品を持ち、Klerken氏のうま味コンセプトに寄せる期待により、SceltaはUIC初の海外賛助企業となった。UICからは二宮理事とアナ・サンガブリエル氏が第Ⅰ部と同じ内容のプレゼンテーションを行った。
Peter Klosse( Maastricht University 講師およびレストラン経営者)はUICとは異なる立場に立ち、うま味はレストランにとって人気を集める要素の一つであること、また味覚の衰えていく年配層にとっては生活の質を高めるものとして紹介した。残念なことにUICメンバーとKlosse氏は今回が初対面だったため、日本での高齢の入院患者の院内食にうま味を取り入れ、食事量が増えたという成果を事前に共有することができなかった。彼はまた古代ローマで食されていたとされるガラム(魚醤)についても言及した。
総括:
多くの食品企業からの参加者はうま味について学び、MSGの効果を食材で代替しようと思っているように感じられた。また、うま味物質を使って塩分摂取量を低減することへの強い関心も見受けられた。 また、とくに第二部のワークショップでは、MSGがアレルギーを起こすかなどの質問があり、MSG安全性への警戒感が強かった。
UICの活動目的はうま味=グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸=の正しい情報を伝えることであるが、一方でMSGの安全性についての質問に答えることもできる、またThe International Glutamate Information Service. という団体もある。MSGのグルタミン酸はよくないが、食材からのグルタミン酸はよいものという考えはUICの学術担当としては理解しがたい。なぜならそのそれらは同一の分子構造であるから。MSGは一番純粋な形のうま味で、後者の食材のうま味は他の物質と混合したものという違いがあるのみだ。
今回の催しで、一般レベルでの、うま味の理解度の低さ、栄養やたんぱく質、アミノ酸の基礎知識の不足を感じた。一般市民レベルではこのような情報不足は未だ散見されるが、食品産業の立場は異なるはずだ。消費者を混乱させるのではなく、うま味についての正確な情報を伝える責任がある。 今回のUICのプレゼンテーションが少しでもうま味物質に対しての疑問を解くことができたことを願っている。