PLANT BASED ✕ UMAMI

「てのしま」の林 亮平シェフ VOL.1

  • てのしま 林 亮平

今回は東京・青山「てのしま」の林 亮平オーナー・シェフにお話をうかがいました。林シェフは香川県出身、老舗料亭「菊乃井」の主人・村田吉弘氏に師事。20以上の国や地域で和食を普及するためのイベントに携わり2018年「てのしま」を開業。京都で習得した日本料理の技法、海外で磨いた知見と感性で、2020年から連続してミシュランガイド一つ星を獲得されています。

林シェフにプラントベースについてうかがうと、日本には精進料理があり、その派生で考えていくと難しい料理ではないと話されます。「ただ、植物性のものに植物性を重ねても、なかなかおいしくはならない。そこで重要になるのがうま味です。ベースになる出汁と、発酵調味料などのうま味のレイヤーを重ねれば、砂糖や油脂に頼らなくてもおいしいプラントベース料理になります」。そこで今回ヒントとしてご紹介してくださったのが林シェフ考案の発酵塩レモン。こちらは次回のVOL.2でレシピと共にご紹介します。

さらに、林シェフのプラントベースフードをおいしくするポイントは、五葷(ごくん)の解放。精進料理では、においが強く、刺激になるとされるねぎ、にんにく、らっきょう、にらは入れませんが、修行をする方々の食事ではないのであれば、玉ねぎやにんにくを使うことで料理の味が一段階あがります。先ほどのうま味のレイヤーを重ねることになります。林シェフもお店でにんにくを使うこともしばしばだそうですが、使い方は茹でこぼしのレベル。それでも肉を想起させる味の厚みに繋がるのですから「五葷(ごくん)の解放」とは、さすがです。

ところで、「てのしま」さんにはプラントベースを希望されるお客様からのお問い合わせは?と聞くと「ものすごくあります。でも動物性を植物性に変えるだけの料理は提供したくない。やるなら、もうひとつラインを作って、きちんと対応するべきだと考えていますから、今のお店のスタイルではできません。この数年で水産資源や農業に従事する方々が明らかに減ってきていて、同時にプラントベースのお客様も増えていますから、確実に対応すべきだと思っています」。

最後に林シェフがいま進められているプロジェクトをお聞きしました。「てのしま」でシェフは、郷土“せとうち” と向き合った料理をされていますが、一歩進めて、ご自身のルーツである香川県“手島(てしま)/店名のルーツ” に宿泊できるレストランを創ろうとされています。船でしか行けない小さな島でとれる魚と野菜、四季折々の“せとうち” を提供。林シェフ曰く「人生をかけたプロジェクト」で、 開業は3年後だそうです。

「てのしま」の林 亮平シェフ VOL.2