鹿児島県では「ちらしずし」のことを、かつての宮中の女房言葉から「すもじ」といいます。 鹿児島県のすしには「酒ずし」と「さつますもじ」がありますが、「酒ずし」が海や山の幸をふんだんに使った豪華な料理として主に殿様や上流武士が食べていたのに対し、「さつますもじ」は高級な材料は使わず、身近な季節の食材を使った庶民のすしとして親しまれてきました。祝いの席で食べる料理のため、10種類前後の食材を使って色あざやかに仕上げ、地酒を使うのが特徴です。 地酒は、清酒をつくる過程のもろみに灰汁を加えて絞ってつくられ、みりんの代用や、おとそとしても飲まれています。鹿児島県は温暖な気候のため、昔は一般的な清酒づくりは適さず、この地酒の製造が盛んになりました。一度も火いれをせずにつくるため、アミノ酸や有機酸、ミネラルが壊れることなく豊富に含まれ、料理のうま味を引き出すといわれています。「酒ずし」はこの地酒をつかって発酵させてつくりますが、「さつますもじ」は手を地酒にひたし、その手で具材と米を豪快にかき混ぜてつくられます。古くから春の行事の際に食べられ、現在も雛祭りや卒業式、入学式など、春先の祝いの席に欠かせない料理です。