チーズのお話

チーズのお話

チーズとうま味

世界中にはさまざまなチーズがあります。チーズのうま味について調べるために、代表的なチーズを分析しました。

フレッシュタイプ / モッツァレッラ Mozzarella(Italy)

もともとは水牛乳で作られる南イタリア特産のチーズですが、現在は世界中で作られるようになりました。鮮度の良さがおいしさの秘訣。弾力があり、ジューシーでミルクの甘みがしみだしてきます。

白カビタイプ / ブリ ド モー Brie de Meaux(France)

白カビチーズの中でひときわ大きいブリ ド モー。セーヌ川とマルヌ川の間の肥沃なパリ盆地で生まれました。上品で繊細な中に力強さがあり、香り高く奥行きがある味わいです。

青カビタイプ / フルム ダンベール Fourme d’Ambert (France)

原型は丸太のような円筒形。引き締まった生地に青カビが広がっています。ピリッとした刺激が少なく香りは控えめ。舌の上でねっとりしたミルクの甘みと青カビの辛みが調和して、それぞれの味わいを引き立てあいます。

青カビタイプ / ロックフォール Roquefort(France)

2000年以上の歴史を持ち、フランス歴代の王様によって守られてきた羊乳製のブルーチーズです。塩分が強く、羊乳由来のバターのようなクリーミィさと甘みがあり、強い個性を放ちます。

青カビタイプ / カブラレス Cabrales(Spain)

牛乳をベースに山羊乳と羊乳の3種類の乳を混ぜて作られます。スペイン北部、ピコス・デ・エウロパ山脈にある自然の洞窟で熟成させることで、自然の青カビが外側から中心に向かって繁殖し、ピリッと刺激的で濃厚な風味に仕上がっていきます。

セミハードタイプ / エメンタール Emmental (Switzerland)

トムとジェリーのおかげですっかりおなじみになった穴のあいたチーズです。塩分が控えめで味わいはやや淡泊。わずかな甘みとクルミの香りがあります。溶かすとよく伸びるので、グラタンなどの加熱料理に最適です。

セミハードタイプ / マンチェゴ Manchego(Spain)

ドン・キホーテの舞台の中央スペイン、ラ・マンチャ地方で生まれたスペインを代表する羊乳製チーズです。現地ではさまざまな熟成度合のものが存在します。熟成6カ月ではほのかな甘み、9カ月を超えるとうま味とコク、ほんのりナッツの風味が楽しめます。

セミハードタイプ / ゴーダ Gouda(Netherlands)

オランダを代表するチーズ。日本に伝わったのは17世紀。鎖国下でも、オランダとは交流があり日本がチーズづくりを始めるときに手本になりました。熟成の若いものはクセのないバターのような優しい味わい。熟成させたものはキャラメルや黒糖を思わせる香ばしさがあります。

セミハードタイプ / チェダー Cheddar(England)

英国生まれのチェダーですが、移民によって世界各地に広まりました。現在はブロック状のチェダーが一般的ですが、円筒形に製造する伝統的なチェダーも存在します。14カ月以上熟成した伝統チェダーは濃厚なうま味と複雑な余韻が感じられます。

ハードタイプ / コンテ Comté(France)

スイス国境のフランシュ・コンテ地方で作られる、生産量も人気もナンバーワンの「コンテ」。ゆっくり熟成させることでヘーゼルナッツ、チョコレート、キャラメルや栗、コーヒーなど何十種類もの複雑ですばらしい味を楽しめます。

ハードタイプ / パルミジャーノ レッジャーノ Parmigiano reggiano (Italy)

チーズの王様として君臨する「パルミジャーノ レッジャーノ」。24~36カ月かけて熟成させることで表皮は飴色になり、中はアミノ酸の結晶が生まれてジャリジャリした食感が楽しめます。粉にしたものは各種料理に使われます。

ウォッシュタイプ / エポワス Époisses(France)

ブルゴーニュのエポワス村で、シトー派の修道士が村人に伝えたチーズです。ワインの搾りかすからつくる蒸留酒を加えた塩水で洗い、仕上げは蒸留酒100%で洗います。中身は柔らかくねっとり。力強く繊細な味わいは通を唸らせます。

シェーヴルタイプ / サント モール ド トゥレーヌ Sainte Maure de Touraine(France)

補強と空気を送る目的で中心にむぎ藁を一本通したバトン型のシェーヴル。まわりにまぶされた木炭粉(食用)が酸味を中和。また水分をほどよくとってくれる役割も果たします。熟成の段階ごとに楽しめるのがシェーヴルの特徴です。

分析結果

チーズの味を作るのは遊離アミノ酸です

食品中に含まれているアミノ酸には二つのタイプがあります。一つはタンパク質の構成成分として含まれているもの、もう一つは個々のアミノ酸が遊離の状態で存在しているもの(遊離アミノ酸)です。タンパク質には味がありませんが、遊離アミノ酸にはそれぞれ特有の味があります。

チーズの原料であるミルク中に含まれるタンパク質は、熟成期間中に酵素の働きで遊離アミノ酸に分解され、チーズの味を作る成分として重要な役割をしています。例えば、エメンタールチーズの場合は甘味をもつアミノ酸(プロリン、アラニン、グリシン、スレオニン、セリン)と苦味をもつアミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、リジン)、そしてうま味をもつグルタミン酸が味を作っています。

熟成がチーズのうま味を凝縮させます

チーズの熟成期間が長くなれば、その分タンパク質は遊離アミノ酸に分解されていきます。特にパルミジャーノ レッジャーノ(パルメザンチーズ)は2年以上熟成させますから、その分、遊離アミノ酸への分解が進みます。熟成中に水分も失われるので(水分約15%)、遊離アミノ酸だけでなく牛乳に含まれていた塩分も濃縮されていきます。パルミジャーノ レッジャーノの約1.6%はうま味の遊離アミノ酸であるグルタミン酸です。うま味と塩味のバランスが取れた堅いチーズは粉状にして調味料として幅広く料理に使うことができるのです。

パルミジャーノ レッジャーノの表面に白い結晶が出ていることがあります。これは水に溶けにくいアミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)の結晶です。唾液にも溶けにくく、食べたときに粉っぽいジャリジャリとした食感を感じます。
チェダーチーズも熟成期間が長いのですが、熟成の間、表面をワックスで覆っているため、水分の蒸発が少なく(水分約35%)、パルミジャーノ レッジャーノほど遊離アミノ酸は濃縮されていません。

一方、フレッシュチーズは熟成させていないので、水分が多くて(水分約56%)柔らかく、遊離アミノ酸もほとんど含まれていません。そのため、あっさりとした味わいで、ソフトな食感とミルクの香りを楽しむことができます。もっちりした食感とミルクの香りが魅力のモッツァレラチーズが、うま味の多いトマトと組み合わせて使われることが多いのも頷けます。

うま味データベースで「チーズ」を検索

どのくらいのうま味成分が含まれているのかを知るためのデータベースにも「チーズ」があります。ぜひ「チーズ」で検索してみてください。

分析

一般財団法人 日本食品分析センター

協力

株式会社フェルミエ(ナチュラルチーズ専門店 Fermier)
http://www.fermier.co.jp/